訴訟参加申立事件
東京地方裁判所平成28年(行ク)第315号
平成29年2月7日民事第51部決定
(本案事件 平成28年(行ウ)第192号 建築変更確認取消裁決取消請求事件)

決   定

当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり

 頭書の本案事件につき,申立人から,行政事件訴訟法22条1項に基づく訴訟参加の申立てがあったので,当裁判所は,次のとおり決定する。

主   文

当庁平成28年(行ウ)第192号建築変更確認取消裁決取消請求事件につき,参加申立人を被参加申立人のために訴訟に参加させる。

理   由

第1 事案の概要
 本案事件は,本案事件原告ら(相手方株式会社NIPPO及び同神鋼不動産株式会社)が,東京都文京区小石川二丁目3番1の土地上に建築を計画しているマンション(以下「本件マンション」という。)につき,指定確認検査機関である株式会社都市居住評価センターが建築変更確認処分(以下「本件処分」という。)をしたのに対し,本件マンションの周辺住民らがその取消しを求めて審査請求をしたところ,東京都建築審査会が本件マンションの計画は東京都建築安全条例(昭和25年東京都条例89号。以下「本件条例」という。)32条6号に違反するから本件処分は違法であるとして同処分を取り消す旨の裁決(以下「本件裁決」という。)をしたため,本案事件被告に対し,本件裁決は適正手続に違反するとともに判断内容が建築基準法等の法令に違反するものであるとして,本件裁決の取消しを求める事案である。
 本件は,上記の周辺住民らの一人である参加申立人が,行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)22条1項に基づく訴訟参加を申し立てた事案である。

 当事者の主張の要旨
(1) 参加申立人は,本案事件において本案事件原告らの請求が認められて本件裁決を取り消す旨の判決がされた場合には,当該判決の形成効ないし拘束力により、本案事件原告らが本件マンションの建築工事の再開をすることができることとなるところ,建築基準法6条の2第1項が建築確認に係る建築物の倒壊,炎上等により直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に存する建築物に居住し又はこれを所有する者の生命,身体及び財産を個別的利益として保護する趣旨を含むものと解されることからすれば,本件マンションの周辺住民である参加申立人は,行訴法22条1項所定の「訴訟の結果により権利を害される第三者」に当たる旨主張する。
(2) これに対し,相手方ら(本案事件原告ら及び同補助参加申出人)は,本件裁決は本件条例32条6号違反のみを理由として本件処分を取消したものであり,建築基準法及び同法施行令並びに同号を除く本件条例の違反を理由としたものではないところ,同号は飽くまで対象となる建築物の居住者を始めとする当該建築物内部に滞在する者の避難上の安全性を確保することを目的としたものであり,当該建築物の倒壊,炎上等により直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に存する建築物に居住し又はこれを所有する者を保護するものではないから,本件裁決が取り消されたとしても本件マンションの周辺住民である参加申立人の権利が害されるものではない(そもそも審査請求手続においては行訴法10条1項の類推適用により自己の法律上の利益に関係のない主張をすることは許されないというべきであって,本件裁決の根拠である本件条例32条6号は参加申立人の法律上の利益に全く関係しないから,同号違反を理由に本件処分を取り消すことは認められるべきではない。)などとして,参加申立人は,「訴訟の結果により権利を害される第三者」に当たらない旨主張する。
 なお,被参加申立人(本案事件被告)は,本件申立てにつき異議がない旨の意見を述べている。

第2 当裁判所の判断
 行訴法22条1項にいう「訴訟の結果により権利を害される」とは,取消訴訟における処分又は裁決を取り消す旨の判決(以下「取消判決」という。)の効力(形成力)によって直接権利又は法律上保護された利益を害される者ないし取消判決の拘束力により新たな処分又は裁決がされることによって権利又は法律上保護された利益を害される者をいい,取消判決によって事実上の利益ないし経済上の利益を害されるにすぎない者はこれに当たらないと解するのが相当である。
(1) 参加申立人は,本件裁決を取り消す旨の判決がされた場合には,当該判決の形成効ないし拘束力により,本件マンションの建築工事が再開され,本件マンションの倒壊,炎上等により周辺住民である参加申立人の生命,身体及び財産という権利又は法律上保護された利益が害される旨主張するので,以下検討する。
(2) 建築確認は,建築基準法6条1項(同法6条の2第1項によるみなし適用の場合を含む。以下同じ。)に基づき,建築主事又は指定確認検査機関が,建築物の建築等の工事が着手される前に,当該建築物の計画が建築基準関係規定に適合していることを公権的に判断する行為であって,それを受けなければ当該工事をすることができないという法的効果が付与されているところ,同法は,建築物の敷地,構造,設備及び用途に関する最低の基準を定めて,国民の生命,健康及び財産の保護を図ることなどを目的とし(1条),建築物に関し,容積率制限(52条),高さ制限(55条,56条)など,建築密度,建築物の規模等を規制することにより,建築物の敷地上に適度な空間を確保し,もって,当該建築物及びその周辺の建築物における日照,通風,採光等を良好に保つことを目的とする規定を設けているが,これらの規定は,本来,上記の目的とともに,当該建築物に火災その他の災害が発生した場合に,隣接する建築物等に延焼するなどの危険を抑制することをもその目的に含むものと解するのが相当である。 このような同法の趣旨及び目的,同法6条1項が建築確認を通して保護しようとしている利益の性質及び内容等に鑑みれば,同項は,当該建築物の倒壊,炎上等による被害が直接的に及ぶことが想定される周辺の一定範囲の地域に存する他の建築物について,その居住者の生命及び身体の安全等や財産上の利益を個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むものと解すべきである。そうすると,建築確認に係る建築物の倒壊,炎上等により直接的な被害を受けることが想定される範囲の地域に存する建築物に居住し又はこれを所有する者は,当該建築確認によって直接法律上保護された利益を害される者に当たるものと解するのが相当である。
 しかるところ,本案事件の一件記録によれば,〔1〕参加申立人は,本件マンションの敷地南側に位置する東京都文京区小石川二丁目×××所在の土地及び建物を所有し居住していること(甲1,丁1),〔2〕本件マンションは,地上8階,地下2階から成る建築物であり,その最高部の高さは26.896mであること(甲2の40〔5枚目〕),〔3〕本件マンションの敷地と参加申立人の所有する土地及び建物は,幅員約6ないし7mの道路を挟んで隣接していること(甲2の40〔5枚目〕,丁2)が認められる。
 そうすると,本案事件において本件マンションの建築変更確認処分(本件処分)を取り消す旨の裁決(本件裁決)を取り消す旨の判決がされた場合には,その効力(形成力)によって,本案事件原告らが本件マンションの建築工事を再開することができることとなる結果,本件マンションに隣接する土地及び建物を所有し居住している参加申立人は,本件マンションの倒壊,炎上等により直接的な被害を受けることが想定されるものといえるから,取消訴訟(本案事件)における本件処分の取消判決の効力によって直接法律上保護された利益を害される者に当たるというべきである。
(3) これに対し,相手方らは,本件裁決は対象となる建築物の居住者を始めとする当該建築物内部に滞在する者の避難上の安全性の確保を目的とする本件条例32条6号違反のみを理由として本件処分を取り消したものであるから,本件裁決が取り消されたとしても参加申立人の権利が害されるものではない旨主張する。しかしながら,本件裁決は,行政不服審査法(平成26年法律第68号による改正前のもの。以下「旧行審法」という。)40条3項の規定に基づいて本件処分を取り消し,その効力を遡及的に否定するものであるところ,このような効力を有する本件裁決が判決により取り消された場合には,当該判決の効力(形成力)によって本件処分(建築変更確認処分)に基づく本件マンションの建築工事の再開が可能となる以上,参加申立人の法律上保護された利益が害されることとなることは否定できないというべきであるから,相手方らの上記主張は採用することができない(なお,取消訴訟における訴訟物が訴えの対象とされている処分又は裁決の違法性一般であると解される以上,本案訴訟における審理の対象は,本件裁決が根拠とした本件条例32条6号違反の有無に限定されるものではないから,同号違反を理由とする本件裁決が取り消されたとしても参加申立人の権利が害されるものではないとする相手方らの上記主張は,その前提を欠くものといわざるを得ない。)。
 また,相手方らは,審査請求手続においては行訴法10条1項の類推適用により参加申立人が本件裁決の根拠である本件条例32条6号違反を主張することは許されないなどと主張するが,行訴法10条1項は,取消訴訟を対象とする規定であって,旧行審法にこれを準用する旨の規定は見当たらず,他に旧行審法上の審査請求手続において行訴法10条1項が類推適用されると解すべき根拠もないから,相手方らの上記主張は採用することができず,他に相手方らが種々主張する点も前示の判断を左右するものとはいえない。
 したがって,参加申立人は,行訴法22条1項にいう「訴訟の結果により権利を害される第三者」に当たるものというべきである。

第3 結論
 よって,参加申立人の行訴法22条に基づく参加の申出を許可することとし,主文のとおり決定する。

平成29年2月7日

東京地方裁判所民事第51部
裁判長裁判官岩井伸晃
裁判官堀内元城
裁判官吉賀朝哉


(別紙)当事者目録

参加申立人■■■■
同代理人弁護士日置雅晴
農端康輔
被参加申立人(本案事件被告)東京都
同代表者知事小池百合子
指定代理人稲田優
中田智裕
相手方(本案事件原告)株式会社NIPPO
同代表者代表取締役岩田裕美
同代理人弁護士植竹勝
原田崇史
相手方(本案事件原告)神鋼不動産株式会社
同代表者代表取締役公文康進
同代理人弁護士伊藤拓
岡本直己
相手方(上記2名補助参加申出人)■■■■
同代理人弁護士丸山健
木下祐介



東京地方裁判所は平成30年5月24日、建築確認取り消しを認める判決を行いました。

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早稻田法學(2017年10月30日) New!
「建築確認処分を取り消した裁決の取消訴訟において、補助参加および行訴法上の訴訟参加を認めた2件の決定」に掲載されました。 →こちらをご覧ください。

TKCローライブラリー(2017年2月28日) New!
「注目の判例」(LEX/DB25544865)に掲載されました。 →こちらをご覧ください。


東京都建築審査会は平成27年11月2日付で、建築確認を取り消す裁決を行いました。

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詳しくは、東京都建築審査会事務局(03-5388-3334)、もしくは、都民情報ルーム(03-5388-2275)にお尋ねください。

比較法学(2017年6月1日) New!
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日本不動産学会誌(2017年3月28日) New!
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朝日新聞(2016年5月28日)
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「建築ジャーナル 2015年12月号」(ISSN 1343-3849)に掲載されました。
詳しくは、建築ジャーナル(052-971-7477)にお尋ねください。

「景住ネットNEWS」(2015年11月28日)に掲載されました。 →こちらをご覧ください。
詳しくは、景観と住環境を考える全国ネットワーク事務局(03-5228-0499)にお尋ねください。

朝日新聞(2015年11月14日)
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東京新聞(2015年11月14日)
「文京のマンション 建築確認取り消し 近隣住民が『基準法違反』で審査請求」に掲載されました。 →こちらをご覧ください。

マンション・チラシの定点観測(2015年10月9日)
「建築審査会が執行停止決定!竣工間際のマンション」に掲載されました。 →こちらをご覧ください。

Law and Practice 第6号(ISSN 1883-8529)
「近隣住民による開発許可取消訴訟における審理判断のあり方について」の論説で、
2011年6月6日の意見陳述書(全文)が掲載されています。 →こちらをご覧ください。

判例地方自治(373号97頁)に
小石川二丁目マンションの開発許可取消訴訟が取り上げられています。



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