(経緯の説明)
文京区は2009年3月11日付で堀坂の開発許可を行うにあたり、文京区が開催した堀坂道路説明会の議事録及び陳情書から(仮称)小石川二丁目マンション(ル・サンク小石川後楽園)に関する住民の意見、要望を抽出し、7項目に整理して、2009年3月27日に口頭で事業者に伝えました。
しかし、伝えた7項目の内容を明らかにしませんでした。
文京区情報公開及び個人情報保護審査会の判断では、非公開決定処分は妥当としつつも、 住民に対して十分な説明がないことへの附言がされました。
その結果、文京区は、平成21年11月6日付「21文都計第623号」回答文書で、7項目の内容を明らかにしました。

 1)建物の高さを20m以下にする。
 2)歴史性に配慮した歩行者空間を整備する。
 3)急峻な位置に車の出入り口は設けない。
 4)歩道状空地は段差がなく、車椅子も通れるようにする。
 5)緑地帯を伴う歩行者優先型の道路整備とする。
 6)パースを作成し説明会を解りやすく。
 7)車寄せを敷地内に設置。


別紙
審査会事件処理結果

事件名 行政指導関係文書非公開決定取消申出事件(第47号事件)

1 審査会の結論

 本件非公開決定処分は妥当である。

2 救済申出の経過

(1) 救済申出人は、平成21年3月27日付で「周辺住民からの要望をマンション事業者に対して指導したことが分かる文書」について、及び同年4月10日付で「周辺住民からの要望についてマンション事業者に口頭指導した項目や内容が分かるもの」について、文京区情報公開条例(以下「条例」という。)第5条に基づいてそれぞれ情報公開請求した(以下「本件請求」という。)。

(2) 実施機関である文京区長は、救済申出人からの聞き取りによって、救済申出人がいう「指導」及び「口頭指導」とは、文京区小石川2丁目に計画されているマンション建築計画(以下「本件計画建物」という。)に関して、実施機関が平成21年3月27日に当該マンション事業者(以下「事業者」という。)を都市計画部計画調整課に呼び、周辺住民の要望を伝えたこと(以下「本件伝達」という。)を指すものと認めるとともに、その際の「指導したことが分かる文書」等、謂求に係る行政情報が存在しないことを理由として非公開の決定を行った(以下「本件処分」という。)。

(3) 救済申出人は、本件処分について平成21年4月16日付で、条例第20条1項の規定により当審査会に対して救済の申出を行った。

3 救済申出人の主張

(1)救済申出の趣旨
 救済申出の趣旨は、本件処分の取消しを求めるというものである。

(2)救済申出の理由の要旨
イ.実施機関の所管課である都市計画部計画調整課は、平成21年2月15日の説明会や同年3月19日付の救済申出人の「区民の声」に対する回答書で、これまでの説明会で出された住民の要望事項については改めて事業者に整理して伝えると約束した。その後計画調整課長は、計画調整課にマンション事業者を呼び7項目の指導をした、と言っている。
ロ.実施機関は「口頭による指導」と言っているが、口頭指導であったとしても、7項目もの内容を記憶のみで指導したとは考えられない。指導した項目や内容を記録したものがあるはずである。
ハ.計画調整課を代表する立場にある課長が指導した項目や内容の記録は公文書に当たるので、公開されるべきである。

4 実施機関の処分理由

 実施機関の処分理由の要旨は次のとおりである。
(1)事業者への働きかけについて
 事業者は、計画地の造成計画に係る開発許可について計画地に隣接する特別区道207号(以下「堀坂」という。)の拡幅整備と併せて、実施機関との間で開発行為の事前協議を平成19年12月3日から開始した。同事前協議は平成20年7月15日に終了し、実施機関は平成21年3月11日に開発許可処分を行った。
 またこの間、上記開発計画について、事業者の説明会とは別に実施機関が主催する近隣説明会や意見交換会を平成20年4月から平成21年3月の開発許可処分までに合計8回開催した。
 実施機関が主催したこの説明会等では、堀坂等の開発事業だけでなく、本件計画建物についても周辺住民から様々な意見、要望が実施機関に伝えられていた。また、実施機関に対する陳情等によっても同様の意見、要望が寄せられていた。実施機関は、平成20年11月20日及び平成21年2月15日に開催した堀坂道路説明会の議事録及び陳情書から本件計画建物に関する住民の意見、要望を抽出し、7項目に整理して平成21年3月27日に計画調整課長が口頭で事業者に伝えた。

(2)文書の不存在
 本件計画建物については周辺住民から繰り返し上記7項目を含む様々な意見、要望が出されており、実施機関では、これまでも事業者に対して住民の声を聞くよう助言、要請をしてきている。こうした助言等は通常、口頭で事業者に伝えており、一般にその内容等について事前に文書を作成したり記録することはしていない。また、本件伝達は、開発計画に関する住民説明会の席上で出された本件計画建物に関する意見、要望を整理してそのまま事業者に伝えたものである。さらに上記7項目は、上記文京区主催の道路整備説明会の議事録や陳情書等から容易に抽出、整理できる事項でもある。
 以上から、本件伝達につき、特にその内容を記録すべき必要性や事情がないことから、そのような文書は作成していない。
 なお、上記7項目を事業者に伝える際に計画調整課長が手控えとして手書きメモを用意したが、これは同課長が事業者に円滑に伝えるために手元で利用するために作成したものであって、実施擬関において、伝達する内容を組織的に確認したこともないし、メモを組織的に利用したり保存したこともない。したがって本件メモは組織共用文書ではなく条例の規定する行政情報に該当しない。
 以上から、本件請求の対象となる行政情報は存在しないので、不存在を理由として非公開決定を行った。なお、救済申出人には、事業者に伝えた7項目の事項は、議事録等から復元し提示できると伝えている。

5 審査会の判断

(1)文書の存否について
 実施機関は、本件伝達について特段文書を作成したり記録を残したりはしていない、と言っているので、この点について検討する。
 実施機関の報告書、説明及び救済申出人の意見書から、本件伝達は、本件計画建物の敷地の造成計画及び隣接道路の拡幅整備にかかる開発許可手続きの中で周辺住民から出された計画建物に関する意見、要望を、開発許可手続きを所管する計画調整課長が事業者に伝えた、というものであったことが認められる。
 実施機関の説明によると、事業者に対して、これまでも住民の声を聞くよう助言や要請等をしてきているが、通常は口頭で事業者に伝えており、その内容等について事前に文書を作成したり記録することはしていないとのことである。
 また本件伝達の内容は、住民説明会の議事録、区民の声等から容易に抽出できるものであるということである。実際に、実施機関が審査会に提出した報告書には事業者に伝えたという7項目が記載されているが、キーワードを中心とした簡便な表現の記述であって、容易に再現できるものと認められる。
 以上のように本件伝達は、住民の意見、要望を事業者に伝えるという趣旨にとどまるものであり、実施機関における口頭指導の一般的な取扱いからしても、本件伝達においてその内容等について特に記録を残すべきものとは認識されなかったものと認められる。したがって本件伝達においては計画調整課長が手元メモを参照したということであるが、このほかに実施機関が文書を作成したり記録を残したりしていないという、文書の不存在についての説明自体に不合理な点はうかがえない。

(2)メモの組織共用文書該当性について
 次に、実施機関の報告書によると、計画調整課長が本件伝達を行った際に手元参照用のメモ(以下「本件メモjという。)を利用したとのことであるので、このメモの組織共用文書該当性について検討する。
 条例は、情報公開の対象となる「行政情報」について、「実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した」文書等であって、「当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が現に保有しているもの」と定義している(第2条2項)。また、「実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が現に保有している」とは、「当該行政傭報が組織としての共用文書の実質を備えた状態をいい、当該実施機関の組織的段階において業務上必要なものとして利用され、保管又は保存されている状態のもの(組織共用文書)を意味する。」とされており、組織共用文書に該当するかどうかは、当該情報の作成状況、利用状況及び保管状況等について実施機関の組織的関与の有無、程度等を勘案し、行政の透明性を確保しようとする傭報公開制度の趣旨、目的に沿って、総合的に判断するものとされている(情報公開制度事務要領)。
 本件メモは、計画調整課長が本件伝達を行うために手元参照用に作成したものであって、職務上作成したものであることは明らかである。しかし、実施機関の説明によると、本件メモは、7項目の事項についてキーワードを手番きしたもので、その内容について上司の承認を得るなど実施機関内で組織的な検討が加えられたものではないし、当該メモを他の職員へ供覧するなど組織的な取扱いがなされたり相手方に提示されたものでもなく、伝達後は個人利用のものとしてすでに廃棄したとのことである。
 本件伝達の趣旨が上記(1)のように、区民の要望等を事業者に伝えるというものであることから、そのことについて特に実施機関の意思決定などを必要とするものとは認められず、キーワードを手番きしたというメモの形状やその取扱いからも、当該メモについて組織的な関与はなかったという実施機関の説明に不合理な点はうかがえない。
 以上から、本件メモは、実施機関の組織的な関与はうかがえず計画調整課長の個人使用にかかる備忘用のメモであって、行政情報には該当しないというべきである。
 なお、救済申出人は、「計画調整課を代表する課長が保有しているハズのメモ等は公文書にあたる」と主張している。確かに、幹部職員が直接関与した場合は職務行為の重要性が認定されやすいという事情はあるかもしれないが、その職にあることが直ちに組織共用文書の要件に当たると考えることはできない。本件については、上記のとおりメモの取扱いの状況から組織共用文書に該当しないというべきである。

(3)以上から、当審査会は、本件請求に係る文書が存在しないという実施機関の説明に不合理な点はなく、該当文書の不存在を理由とする本件非公開決定処分は妥当なものと認める。

 ところで、救済申出人の意見書等からうかがうに、本件請求の真意は本件伝達に係る7項目の内容そのものよりも、文書がないなど住民に対して十分な説明がないとして実施機関の姿勢を問うところにあるように思われる。本件伝達については、意見、要望等を整理して事業者に伝えると住民に説明していたこともあり、実施機関においては、こうした経緯を踏まえて住民の無用な不信感を招かないよう説明責任に留意した慎重な対応が望まれる。



東京地方裁判所は平成30年5月24日、建築確認取り消しを認める判決を行いました。

東京建築士会 ニュース(2018年10月24日) New!
「『2018年9月号 法規メールマガジン』コラムの記事内容について」に掲載されました。 →こちらをご覧ください。

東京建築士会 建築東京(2018年10月10日) New!
小田圭吾理事の「法規コラム」に掲載されました。 →こちらをご覧ください。

日経 xTECH(2018年9月12日) New!
「完成直前の確認取り消しは覆らず 申請時に重視すべき解釈ミスのリスク」に掲載されました。 →こちらをご覧ください。

新・判例解説Watch(2018年8月24日) New!
「建築計画変更確認処分を取り消した建築審査会による裁決の適法性」に掲載されました。 →こちらをご覧ください。

TKCローライブラリー(2018年6月12日) New!
「注目の判例」(LEX/DB25560274)に掲載されました。 →こちらをご覧ください。

日経 xTECH(2018年6月1日) New!
「確認取り消しマンションで地裁判決、『都の判断に誤りなし』」に掲載されました。 →こちらをご覧ください。

毎日新聞(2018年5月24日) New!
「文京・マンション 建築確認白紙の裁決『判断に誤りなし』」に掲載されました。 →こちらをご覧ください。

時事通信(2018年5月24日) New!
「建築確認取り消し認める=竣工直前の高級マンション ― 東京地裁」に掲載されました。 →こちらをご覧ください。

日本経済新聞(2018年5月24日) New!
「マンションの建築確認取り消しめぐる訴訟 建築主が敗訴」に掲載されました。 →こちらをご覧ください。

早稻田法學(2017年10月30日) New!
「建築確認処分を取り消した裁決の取消訴訟において、補助参加および行訴法上の訴訟参加を認めた2件の決定」に掲載されました。 →こちらをご覧ください。

TKCローライブラリー(2017年2月28日) New!
「注目の判例」(LEX/DB25544865)に掲載されました。 →こちらをご覧ください。


東京都建築審査会は平成27年11月2日付で、建築確認を取り消す裁決を行いました。

東京都建築審査会 口頭審査議事録(第1254回)は、東京都庁で公表されています。 →こちらをご覧ください。
詳しくは、東京都建築審査会事務局(03-5388-3334)、もしくは、都民情報ルーム(03-5388-2275)にお尋ねください。

比較法学(2017年6月1日) New!
「『採光権』についての一考察」で紹介されました。 →こちらをご覧ください。

日本不動産学会誌(2017年3月28日) New!
「建築確認をめぐる諸問題と今後のあり方」に掲載されました。 →こちらをご覧ください。

毎日新聞(2016年6月28日)
「東京・小石川のマンション 完成直前に都『建築不許可』」に掲載されました。 →こちらをご覧ください。

朝日新聞(2016年5月28日)
「マンション開発 紛争予防制度を 文京の住民団体が請願」に掲載されました。

東京新聞(2016年5月28日)
「マンション建設 事前3者協議 制度に」に掲載されました。 →こちらをご覧ください。

建築基本法制定準備会ニューズレター(2016年4月21日)
「シンポジウム報告『分譲マンションに求められる法制度と具体策』」に掲載されました。 →こちらをご覧ください。

日本経済新聞(2016年3月30日)
「マンション紛争、文京区で多発 住民と事業者、景観・安全巡り 完成間近で中断/反対運動」に掲載されました。 →こちらをご覧ください。

フジテレビ「みんなのニュース」(2016年2月11日)
「『妻は半狂乱』億ション契約解除で怒号」で放送されました。 →こちらをご覧ください。

Yahoo!ニュース(2016年2月11日)
「マンション違約金 課税に怒り」に掲載されました。 →こちらをご覧ください。

独立系メディア E-wave Tokyo 青山貞一・池田こみち(2016年2月5日)
「特集:UR跡地巨大マンション完売後に『建築確認取消』の前代未聞!」に掲載されました。 →こちらをご覧ください。

テレビ朝日系列「羽鳥慎一モーニングショー」(2016年2月3日)
「『詐欺だ!』購入者激怒! 人気マンションは“違法建築”」で放送されました。 →こちらをご覧ください。

テレビ東京系列「ニュースアンサー」(2016年2月1日)
「追及第3弾! “違法”マンション…立ち上がる購入者」で放送されました。 →こちらをご覧ください。

フライデー(2016年1月8日)
「三菱地所レジデンス億ションが引き渡し2ヵ月前『突然建設中止!』で住民激怒」に掲載されました。 →こちらをご覧ください。

フジテレビ「みんなのニュース」(2015年12月23日)
「建築確認したのに住めない…潜む問題」で放送されました。

テレビ東京系列「ニュースアンサー」(2015年12月23日)
「追及!違法マンション 契約ドタキャン 立ち上がる購入者」で放送されました。 →こちらをご覧ください。

日経BP ケンプラッツ(2015年12月2日)
「完売マンションの建築確認を取り消し 東京都建築審査会が1階を『避難階』と認めず」に掲載されました。
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Yahoo!ニュース(2015年12月7日)
「東京都内の高級マンションが入居直前になって契約解除され、購入者の怒り爆発」に掲載されました。 →こちらをご覧ください。

フジテレビ「みんなのニュース」(2015年12月7日)
「追跡マンション不安 入居寸前に契約解除、購入者が激怒です」で放送されました。 →こちらをご覧ください。

テレビ東京系列「ニュースアンサー」(2015年11月30日)
「発覚!違法建築マンション・入居間近…購入者怒り」で放送されました。 →こちらをご覧ください。

「建築ジャーナル 2015年12月号」(ISSN 1343-3849)に掲載されました。
詳しくは、建築ジャーナル(052-971-7477)にお尋ねください。

「景住ネットNEWS」(2015年11月28日)に掲載されました。 →こちらをご覧ください。
詳しくは、景観と住環境を考える全国ネットワーク事務局(03-5228-0499)にお尋ねください。

朝日新聞(2015年11月14日)
「完成直前のマンション、建築確認取り消し 東京・文京」に掲載されました。 →こちらをご覧ください。

東京新聞(2015年11月14日)
「文京のマンション 建築確認取り消し 近隣住民が『基準法違反』で審査請求」に掲載されました。 →こちらをご覧ください。

マンション・チラシの定点観測(2015年10月9日)
「建築審査会が執行停止決定!竣工間際のマンション」に掲載されました。 →こちらをご覧ください。

Law and Practice 第6号(ISSN 1883-8529)
「近隣住民による開発許可取消訴訟における審理判断のあり方について」の論説で、
2011年6月6日の意見陳述書(全文)が掲載されています。 →こちらをご覧ください。

判例地方自治(373号97頁)に
小石川二丁目マンションの開発許可取消訴訟が取り上げられています。



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